リフォームコラム

マンションでトイレの位置変更は可能?気になる費用・注意点をプロが解説

マンションのトイレを移動したいと考えていても、「本当に移動できるのか」「費用はどのくらいかかるのか」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。本記事では、マンションでトイレ位置を変更する際に押さえておくべき概要や注意点について、プロの視点を交えて解説します。

マンションでは戸建てと異なる構造上の制限や管理規約との兼ね合いがあるため、計画通りに進まないケースもあります。失敗を回避するためにも、あらかじめ正しい知識と情報を得ておくことが重要です。

これまで複数の事例を見てきましたが、実際には排水方式や管理組合のルールなど、考慮すべきポイントは多岐にわたります。的確な情報を押さえることで、将来的に快適な暮らしを実現しやすくなるでしょう。

マンションでトイレを移動する主な理由

まずは、なぜマンションでトイレを移動する必要があるのか、その代表的な理由を確認しておきましょう。

部屋の動線を見直し、効率的で快適な生活空間をつくるためにトイレ位置を変えたいというケースがあります。住まい方が変化したり、家族構成が変わったりすることで、従来の間取りでは使いにくさが生じることも珍しくありません。

来客時のプライバシーを確保したい、あるいは収納スペースを拡充させたいといった理由で、トイレの移動を検討することももちろんあります。特に水回りの計画はマンションリノベーションのキーポイントとなるため、トイレの位置を工夫することで部屋全体の住みやすさも大きく変わるのです。

また、高齢の家族に配慮したバリアフリー化、あるいは将来的な介護を視野に入れた動線づくりなども重要な検討事項です。こうした状況に応じてトイレの移設を考えることで、より長く安心して暮らせるマンションづくりが叶うでしょう。

マンションのトイレ移動の基本構造と仕組み

マンションでのトイレ移動リフォームは、排水経路や床構造の制限などが大きく影響します。ここでは基本構造を理解しておきましょう。

マンションにおけるトイレ移動の成否は、排水管をどのように確保するかが大きな鍵を握ります。一般的に排水は重力によって水が流れる仕組みのため、勾配をしっかり取る必要があり、勾配が不足すると排水不良や臭気トラブルの原因となります。

管理規約の範囲内でできる工事内容をあらかじめ理解しておくことも重要です。共用部分である排水縦管の大幅な移動は認められない場合が多く、どうしても配管経路を変更できないケースでは代替案としてトイレの向き変更や設備変更を検討することもあります。

加えて、床の高さを上げる必要があるかどうかは、マンションによって大きく異なります。直床か二重床かという構造の違いも、最終的にどの程度の工事が必要かを左右する要素となるため、専門家による現地調査が欠かせません。

排水の勾配と排水方式について

トイレを移動する際には、重力排水か圧送排水かという方式がまず検討されます。重力排水の場合は配管に一定の勾配をつけて汚水を流しやすくする必要がありますが、移動位置が大きくなると床下スペースが足りない可能性があります。

圧送排水はポンプで汚水を排出する方式で、勾配に制限されにくい点がメリットです。しかしながら設備費が高くなりやすく、導入後のメンテナンスコストも増えるため、安易に選ぶのではなく将来的なランニングコストまで考慮して決定することが大切です。

いずれの方式でも、排水がスムーズに行われないとつまりや嫌な臭いの原因になる可能性があります。管理組合や専門業者と相談しながら、適切な排水方式を選びましょう。

床排水・壁排水・直床・二重床の違い

マンションでは、床排水を採用する場合が多いですが、一部の住戸では壁排水が用いられることもあります。壁排水の場合は排水パイプが壁の中を通るため、床下スペースを使わずに配管を確保できるケースもあります。

直床構造の場合、床スラブと仕上げ材の間にあまり余裕がないため、排水管を通すスペースが非常に制限されます。一方、二重床構造では床下にある程度の空間があり、配管を通しやすいのでトイレ移動が比較的容易になることもあります。

ただし、二重床の場合でも排水勾配や高さの関係でトイレを大きく移動させられないケースも珍しくありません。構造に適した工法を選ぶためにも、現地調査の結果を踏まえながらプロと綿密に打ち合わせを行う必要があります。

トイレ移動リフォーム施工の流れと注意点

実際にトイレを移動する際の具体的なステップと、押さえておきたい注意点を紹介します。

最初に行うべき作業は、管理組合や管理会社との打ち合わせです。マンションでは共用部への影響や騒音、防水工事などに対して厳格なルールが定められているケースが多いため、許可を得るために必要な書類や申請方法を早めに確認しておくことが大切です。

その後、リフォーム会社と詳細な打ち合わせを行い、どのようにトイレを移動させるかを検討していきます。配管経路や床の高さ、騒音・臭気対策など、細部までプランを詰めることで、想定外の追加工事や予算オーバーを避けることができます。

施工中は水道を止める時間帯や廃材の搬出経路など、近隣住戸へなるべく迷惑がかからないように配慮することも大切です。専門家の管理のもと、しっかりと工事計画を立てることで、スムーズかつ安全にトイレ移動を完了できます。

管理規約や施工ルールのチェック

マンションごとに定められている管理規約や施工ルールを事前に確認し、計画書を作成します。トイレの位置変更が共用部に影響を与えるような工事の場合、特別な申請が必要になることもあります。

マンション管理組合からは、設備図面の提出を求められる場合もあるため、そのための書類や図面を用意しておきましょう。特に排水管を新たに引き回す場合は、施工音や振動を発生させるため、近隣に配慮したスケジュール調整も重要となります。

違反とみなされる工事を行うと、将来的に売却や賃貸の際に問題となるリスクがあります。トラブルを避けるためにも、管理規約に沿った手続きをしっかり踏んでから着工するようにしましょう。

水漏れ・下水臭を防ぐための対策

排水管の延長や新設では、継ぎ目部分から水漏れを起こすリスクが高くなります。そのため、防水シールや適切な勾配設定に加え、専門家による配管の圧力テストなどの点検をしっかり行うことが必要です。

加えて、排水管まわりに適切な防臭対策を施すことで、生活空間に下水臭が侵入するのを防ぐことができます。特にトイレと共用廊下が近い場合などは、臭気が周囲に拡散しないように気を配りましょう。

施工後しばらくしてからも定期的に点検を実施し、漏水や臭気の発生がないか確認すると安心です。万が一トラブルが見つかった場合は、早期に対処することで二次被害を最小限に抑えることができます。

トイレ移動リフォームにかかる費用相場と費用を抑えるコツ

トイレの位置変更は大規模な工事になることが多く、費用も気になるところです。ここでは相場と費用を抑えるためのポイントを解説します。

マンションでのトイレ移動リフォーム費用の目安は約40万円から55万円といわれていますが、配管を大きく引き回すケースではより高額になることもあります。床の高さ調整、遮音対策、防臭工事の有無などで金額が増減するので、あらかじめどの程度の予算が必要かを把握しておきましょう。

排水方式の選択や設備のブランド、グレードによっても大きく費用が変わります。高機能なタンクレストイレを導入すると、便器本体の価格は高くなりがちですが、見た目やお手入れのしやすさなどのメリットもあるため、総合的なバランスで検討することが大切です。

また、複数のリフォーム業者から見積りを取得することで、相場や施工内容を比較しやすくなります。費用だけでなく、スタッフの対応や工事管理の質など多角的な面を比較検討しながら、最適な業者を選びましょう。

費用内訳と見積りのポイント

トイレ移動のリフォーム費用は、大きく分けると設備購入費、工事費、諸経費に分けられます。工事費には配管の新設や撤去、床や壁の補修、電気工事など多岐にわたる項目が含まれるため、見積りでは一つひとつの内訳を確認することが大切です。

特に、壁面や床の防水処理と遮音対策はマンションリフォームにおいて重要な要素であり、これらが不十分だと後々トラブルが起きる可能性があります。工事範囲に応じて、見落としがないかよくチェックしてください。

また、工事期間中の仮設トイレ設置や荷物の移動など、想定していない追加費用が発生する場合もあります。見積り以外のコストについても事前にヒアリングし、予備費を確保しておくと安心です。

コストを抑えるための方法

コストを抑えるには、既存の配管をできるだけ活用し、大規模な床上げや間仕切りの変更を最小限にとどめるのがポイントです。移動距離が短いほど工事規模も縮小できるため、結果として費用を抑えやすくなります。

また、設備グレードを選定する際には、必要最低限の機能を備えた製品を探すのも一つの方法です。高機能を追求すると価格を押し上げがちですが、本当に使う機能を精査し、コストパフォーマンスの良い商品を選択すれば予算を最適に活用できます。

さらに、キャンペーンやセールを適宜狙うなど、リフォーム時期を工夫するのも一案です。同時に、マンション全体でのリフォーム計画と合わせて実施すると施工費の重複を減らせるため、管理組合や近隣住戸とのタイミング調整を行うことも有効です。

トイレの種類選びとマンション特有の制限

トイレの種類によっては、マンション特有の配管構造や規約制約により導入が難しい場合があります。事前に知っておくべきポイントを紹介します。

マンションのトイレを選ぶ際には、配管の勾配や水圧などの物理的条件だけでなく、管理規約が適合しているかどうかもチェックが必要です。タンクレストイレを導入したものの、排水方式や水圧が足りずに上手く動かない例も稀にあります。

また、リフォーム後のトイレが廊下や隣接住戸に近い位置になる場合は、遮音性能や防臭性能にも配慮すべきです。トイレの機能やグレードばかりに目を向けるのではなく、マンション特有の環境に合ったトイレを選ぶことが大切です。

さらに、将来のライフステージの変化も考慮し、必要に応じて手すりや段差解消が可能な設計を組み込むことを検討しましょう。条件を踏まえた上で選定すれば、長く快適に暮らせるマンション空間を実現できるでしょう。

タンクレスの導入リスク

タンクレストイレは見た目がスッキリして省スペース化に優れている一方で、水圧が十分に確保できないと洗浄力に問題が出る場合があります。特に高層階や老朽化が進んだマンションでは、水圧不足が課題となりやすいです。

また、タンクレストイレには電力を使用する機能が多く、停電時に使用が制限される可能性があることも考慮しなければなりません。日常生活の快適さを最優先にするなら、タンク付きトイレの方が安心という場合もあります。

導入前には、メーカーや施工業者に問い合わせて、マンションで問題なく稼働できる機種かどうかを確認することが大切です。事前に試算してもらうことで、洗浄力や水はねなどのトラブルを避けやすくなります。

将来を見据えたバリアフリー設計

マンションのトイレ移動を機に、バリアフリーの考え方を取り入れると長期的に有益です。高齢の家族がいる場合や将来的に介助が必要になる可能性がある場合、余裕のある出入口幅や手すりの設置スペースを確保すると安心感が高まります。

段差をできるだけ減らすことで、車イスやベビーカーでの移動が楽になり、日常的な安全性も向上します。トイレ内のレイアウトも、奥行きや足元のスペースをゆったり取れば介助しやすい環境づくりに役立ちます。

将来設置が必要になる手すりなどをあらかじめ取り付けておくか、後付けがしやすい下地補強をしておくと、ライフステージの変化にも柔軟に対応できます。早めの段階から専門家と相談しながらプランを固めておきましょう。

トイレ移動リフォームの実例紹介

実際にどのようにトイレの位置を変えたのか、実例を通してイメージを具体化してみましょう。

マンションでのトイレ移動は、単に便器を移すだけでなく排水管の配管や床・壁の補強など、さまざまな課題を乗り越える必要があります。事例を知ることで、現実的な工事内容や費用感を把握しやすくなるでしょう。

特に古いマンションでは、当初の設計図面と現状が異なる場合もあるため、想定外の施工が必要になることがあります。実例を通して学ぶことで、トラブルを未然に防げる可能性が高まるでしょう。

以下では、比較的スムーズに施工できた同フロア移動の事例と、階を跨いだ大がかりな事例を紹介します。それぞれの見どころを把握して、リフォーム計画に役立ててください。

同フロア内でトイレを移動した事例

この事例では、既存の排水縦管が近い位置にあったため、配管の大部分を活かしながらトイレの場所をリビング側に移動しました。その結果、工事期間を短縮でき、費用も最小限に抑えることができました。

床下スペースに若干の余裕があったので、大幅な床上げは必要なく、踏み台や段差による不便も軽減できました。こうした条件が揃っていると、想定よりもスムーズにリフォームを完了させやすいでしょう。

同フロア内での移動は見た目の変化も大きく、リビングとの動線が改善されたことで住み心地が向上したという声が多く聞かれます。こうした成功例を参考に、可能な限り配管への負担の少ないレイアウトを検討するのがポイントです。

階を跨いだトイレ新設事例

二階建てメゾネットタイプのマンションで、上階にトイレを新設した事例です。排水管を長く引き回すことになるため、配管勾配の確保と階下への遮音対策が最重要な課題でした。

施工では、二重床部分のスペースを活かしつつ、圧送排水方式も併用することで床下勾配を無理なく確保しました。また、防音マットや遮音シートを複数層に施工し、水音や排水音が下階に響きにくいよう対策を徹底しました。

結果として、居住者からは「移動に手間がかかると思っていたが意外に快適に使えている」「上下階のプライバシーが保たれ不便さを感じない」と高評価を得ています。コストは高めになりますが、空間の有効活用には有効な方法といえるでしょう。

マンションのトイレ位置変更リフォームでよくあるQ&A

実際にトイレ移動を検討している方から寄せられる質問と、その回答をまとめました。

トイレ位置を動かすテーマは、マンションのリフォーム相談の中でも非常に多い質問の一つです。特に管理規約や工事期間、費用などに関する問い合わせが多く寄せられます。

実際には、マンションごとに異なる施工ルールや事前手続きがあるので、一般的な情報だけでなく、個別の状況を踏まえた対応が必要になります。ここでは、よくある質問とその概略を紹介します。

詳細は必ず管理組合や専門家に相談し、自分のマンションの条件に合うかどうかを最終的に確認することが重要です。

管理組合への申請手続きとは

工事申請の方法は管理組合によって異なりますが、概ね事前にリフォーム計画書や設備図面、工事業者の情報を提出する必要があります。工事内容が共用部分に及ぶ場合は、承認に時間がかかるケースも珍しくありません。

また、工事日程や騒音対策、ゴミの搬出計画などについても細かく報告を求める管理組合が多いです。提出書類に不備があるとやり直しになるため、リフォーム会社と連携しつつ早めに準備を進めましょう。

管理組合から許可が下りるまでには1~2カ月ほど要することが多いため、スケジュールには余裕を持って計画を立てるようにしてください。

工事期間や生活への影響

トイレ移動リフォームの工事期間は、小規模な移動であれば1~2週間程度ですが、配管を大きく変更する場合や二重床の大幅な調整が必要な場合は1カ月ほどかかることもあります。工程を把握しておくことで余裕を持った準備ができます。

工事中はトイレが使用できない期間が発生するため、工事エリア以外に仮設トイレを設置する、あるいは共用部分や近隣の施設の利用など対策を検討しなければなりません。家族の人数が多い場合はスケジュール管理をしっかり行い、ストレスを軽減する工夫が必要です。

また、解体や配管工事の際には騒音や振動が伴うので、近隣への挨拶や通知を行い、クレーム防止に努めることも重要です。快適なリフォームのためには、住民同士のコミュニケーションが欠かせません。

まとめ・総括

マンションでトイレを移動する際に押さえておきたい点を最後に振り返り、リフォームを成功させるためのコツを整理します。

マンションのトイレ位置変更は、一見すると大がかりな工事に感じられますが、配管経路や床構造、管理規約を正しく理解すれば、実現可能な選択肢は意外と多いものです。成功のカギは、物理的な制約と管理組合の規約をしっかり把握したうえで、プロの視点を活かして計画を進めることにあります。

費用は約40万円から55万円という幅が多いですが、排水経路の変更規模やトイレのグレードによって差が大きく出るため、見積りの段階で詳細を確認しておくと安心です。複数の業者に相談して費用と工事内容を比較検討することで、満足のいくリフォームを実現しやすくなります。

将来的なライフステージの変化に合わせたバリアフリー設計や、遮音・防臭対策なども考慮すると、より長く快適に暮らせるマンションづくりができます。情報を集め、管理組合や専門業者と連携しながら、安心できるトイレ移動リフォームを目指してください。

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記事の監修者

リフォームアドバイザー

栗山正寛

二級建築士/二級施工管理技士

お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。

お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。