リフォームコラム

上がり框とは?役割や設置メリット、高さの決め方や事例を紹介!

上がり框とは玄関のたたきとホールの境目のこと。新築やリフォームをするときに、上がり框の段差の高さやデザインなどについて迷われることがあるかもしれません。上がり框にこだわると玄関の第一印象が変わり、毎日の暮らしがよりよいものになりますよ。
そこで今回は上がり框の役割や高さの決め方、素材やデザインについて詳しく解説。また上がり框をつけるメリット・デメリットを、バリアフリーや掃除の観点も交えてご紹介します。リノベーションで玄関のイメージアップを叶えた施工事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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上がり框とは?

上がり框(あがりかまち)とは、玄関をあがるときの段差の側面につく部材。玄関ホールと土間との境界部分のことで、「玄関框」と呼ばれることもあります。

そもそも「框(かまち)」というのは建築用語で、段差のある部分に横向きにつける化粧材のことをいいます。取り付けられる場所によって上がり框以外にも、床の間の「床框」、縁側の「縁框」などいくつかの種類があります。

上がり框の役割には、機能的な面と社会的な面があります。

  • 機能的な役割:
    床材の断面の素材がむきだしにならないよう保護する。土や埃が室内に入るのを防ぐ。玄関を美しく見せる。
  • 社会的な役割:
    家を外と内に分ける。室内で靴を脱ぐ文化の日本では、玄関の段差をあがったときに家に帰ってきた安心感を感じたり、オンオフモードの切り替えをする方もいる。

かつての上がり框は、家を訪れた人が座って話をする場所、コミュニケーションの場としても使われていました。しかし核家族化が進んでご近所との交流も減ると、玄関はあまり広さのいらない場所に。上がり框はバリアフリーの観点から段差が低くなり、最近では上がり框を設けない家やマンションも見られるようになりました。

ただし日本の建築の歴史を見ると、玄関に家の威厳を表すような意味合いがあり、上がり框も玄関の顔として重要視する方も多いです。上がり框をつけるかつけないか、正解はないので好きな方を選ぶとよいでしょう。

ここで言う「上がり框がない」とは、つまり段差がないことを指しています。しかし「段差はあるけれど、上がり框の部材をつけず床材を切りっぱなしにしている」というケースもあり、両者は分けて考える必要があります。業者に相談するときは希望をはっきりと伝えましょう。

段差がない場合は、土間とホールが同じ素材で続いていくのか、素材をわけて間に細い見切りを入れるのか、またはフラットな框としての素材を挟むのかを考えます。上がり框の仕上げ方によって玄関の印象が一気に変わりますので、ぜひこだわってみてください。

上がり框の素材の種類

上がり框の素材には踏み込みに耐えられる丈夫なもの、たとえば木材やタイル、石材などがよく使われます。
上がり框だけが変に浮いてしまわないよう、玄関まわりとの調和を考えるのがポイント。靴箱や、玄関ホールの床、土間などと色味をそろえるのもおすすめです。

木材

木材の上がり框には無垢材や、薄い合板に化粧シートを貼ったものなど、いろいろな種類があります。上がり框の奥行き、つまり足に触れる面の幅が広いほど、重厚感を演出できるでしょう。樹種でいうと、香りのよいヒノキや、耐久性に優れ木目の美しいケヤキなどが人気です。その他には、サクラ、ニレ、タモ、カエデなども使われます。

タイル

タイルも耐久性が高く、汚れに強いため、上がり框に適した素材です。小さめのカラフルなモザイクタイルを並べると、個性的でかわいらしい玄関になります。

石材

玄関に高級感を出したり、スタイリッシュに仕上げたいなら石材もおすすめ。硬く耐久性に優れツヤのある御影石や、光沢とマーブル模様がきれいな大理石などがよく使われます。

上がり框の種類

上がり框は通常まっすぐにつくることが多いですが、他にもL字型や曲線などさまざまな形状があります。玄関の大きさや目的によって、イメージにあうものを選ぶとよいでしょう。

斜めタイプ

入り口から見て水平ではなく斜めになっている上がり框は、個性的でおしゃれに見えます。奥行きが出るので広く見える効果もあるでしょう。同じ幅の玄関で比較すると、まっすぐにつける場合より直線部分が長くなるので、家族が多い家にもぴったりです。

L字型タイプ

上がるところが二辺あるL字型タイプは、広めの玄関に使われることが多いです。たとえば片方は廊下に、片方は客間につなぐといった使い方もできます。

変形タイプ

波型や台形のような変形タイプの上がり框にすると、玄関が個性的な雰囲気に。狭小地や変形地にうまく玄関をおさめたいときや、ドアの配置に合わせたいときなどに使われることもあります。

曲線タイプ

曲線タイプはS字やアールがついた形。美しいラインでやわらかい雰囲気を出せるでしょう。木材を加工したり、タイルを曲線にあわせて貼ったりする手間があるので、コストは高めになります。

上がり框の高さの決め方

昔の日本の民家では、上がり框の段差は30cmほどと大きくつくられることもありました。床下の湿気を逃がすために、地面より高いところに家をつくることが多く、屋外と室内の高さの違いに対応するために、高い上がり框が必要だったのです。ところが近年では湿気を逃がす家づくりの技術が発達したこともあり、昔よりも低めの段差でつくられることが増えています。

最近の戸建ての上がり框の高さは、18cm以下が多くなっています。国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」でも、戸建て住宅で18cm以下、集合住宅で11cm以下が推奨されています。
戸建てと集合住宅は床下の構造も違うため、上がり框の高さの傾向にも違いがあります。集合住宅から戸建て住宅へ引っ越すと、段差が高く感じられることがあるかもしれません。

新築やリフォームで上がり框の高さを決めるときには、今使っている玄関の高さを測って目安にするのもひとつの方法です。しかし床下のつくりによっては、希望どおりの高さにできないこともあります。まずは業者に相談してみましょう。

上がり框の設置メリット

上がり框を設置すると、次のようなメリットがあります。

土埃や泥汚れをブロックできる

上がり框に段差があると、靴についた泥汚れや砂ぼこりが室内に入るのをブロックしてくれます。1〜2cmと小さな段差でも、あるのとないのとでは室内の汚れ方が大きく違ってきます。ベビーカーやガーデニング用品などの泥がついたものも、上がり框より下の土間に置けば、汚れを気にせず過ごせるでしょう。

椅子の代わりになる

上がり框の段差を、椅子の代わりとして使えるというメリットも。ブーツのように履きにくい靴を履くときや、小さなお子様が靴の着脱の練習をされるときなどに、段差があるととても便利です。足腰の弱くなった高齢の方にとっても、玄関に座るところがあると役に立つでしょう。お客さまが来たときにちょっと腰掛けるのにもちょうどよく、立って話すよりリラックスしながら玄関でコミュニケーションをとれます。

玄関に個性をもたせられる

お客様がいらしたとき、一番に目に入るのが玄関まわりです。上がり框も玄関に入ったときぱっと目につきやすい場所になります。上がり框のデザインや形、素材にこだわると、個性的でおしゃれな玄関になるでしょう。

上がり框の設置デメリット

一方で、上がり框を設置すると次のようなデメリットがあります。

バリアフリーにならない

上がり框に大きな段差があると、バリアフリーの観点から見るとデメリットに。特に高齢者や子どもがいる家では転倒の心配があったり、段差の上り下りで足腰に負担がかかったりするかもしれません。足腰が弱い方や、車いすが必要な方も、上がり框の段差がないほうがスムーズに動けるでしょう。

コストがかかる

上がり框には耐久性のある素材が必要。素材やデザインによっては、材料費やデザイン費がかさんでしまうこともあります。また将来的には、段差をなくしバリアフリーにしたいと思ったときのことも考えておかなくてはなりません。段差をなくすには大掛かりな工事が必要になることも。上がり框の段差が心配だという場合は、はじめからフラットな玄関も検討してみるとよいでしょう。

上がり框の設置をしたほうがいい人

次のような方は、上がり框の設置をしたほうが満足いく家づくりになります。

清潔な玄関を保ちたい人

清潔な玄関を保ちたい方には、上がり框の設置をおすすめします。玄関の土間部分や上がり框付近にはゴミやホコリがたまりやすいものです。玄関の段差がなければ、それらが室内に入ってきてしまうことになります。
上がり框がなくても玄関全体の掃除をがんばればいいと思うかもしれませんが、毎日のことだと大変です。段差があるほうが、掃除道具を室内用と土間用で分けやすく清潔でしょう。上がり框によって室内と玄関土間が明確に分かれているほうが、今日の掃除はここまでと段取りしやすく、清潔な玄関につながります。

靴を脱ぎ履きするとき段差に腰掛けたい人

玄関の段差がなくフラットなバリアフリー住宅では、意外と靴を脱いだり履いたりしにくいもの。上がり框のようにちょっと腰掛けられる段差があることで、靴の脱ぎ履きがしやすく、立ち上がりやすくもなります。
とくに子どもや高齢者にとっては、ほどよい段差があったほうが動作がスムーズになることも多いでしょう。上がり框の段差がない玄関では、靴の脱ぎ履きで腰掛けるためのベンチや椅子などを用意することもあります。

屋外と室内の境目をはっきりさせたい人

屋外と室内の境目をはっきりさせたいという場合も、上がり框を設置したほうがよいでしょう。海外では土足のまま室内へ上がるので、上がり框がなくてもとくに問題はありません。しかし日本では室内では靴を脱ぐのが一般的ですよね。上がり框がないと、どこまでが屋外でどこからが室内かがわかりにくく、お客様がきたときに「どこで靴を脱いだらいいのか?」と困ってしまうこともあります。
ただし段差がなくフルフラットな玄関でも、玄関土間と室内の床材を変えるなど、境目をわかりやすくする方法はあります。

自分らしさのある玄関にしたい人

上がり框は家に入って最初に目につきやすい場所です。上がり框の仕上げ方によって、家の顔である玄関を個性的に仕上げられることもあります。
たとえば曲線の上がり框でやわらかい印象を与える玄関にしたり、好きな色のモザイクタイルで個性を演出してみたり。毎日家族が通る玄関に、自分らしさや家族らしさを出したい方は上がり框を設置しましょう。

上がり框の設置をしないほうが良い人

一方で、次のような方は、上がり框の設置をしないほうがよいかもしれません。

予算をなるべく抑えたい人

上がり框に耐久性に優れた素材を使ったり、おしゃれにデザインしたりと、こだわればこだわるほど予算がかかります。新築やリフォームのコストカットをしたい場合は、あえて上がり框を設置しないという選択肢もあるでしょう。
考え方によっては、玄関はずっといるスペースではないので、暮らしのスペースであるリビングやダイニング、寝室にお金をかけたいと思う方もいます。ただし玄関は毎日家族が通り、帰ってくる場所、お客さまの目につく場所でもあるのでバランス感が必要です。

段差のないバリアフリー住宅にしたい人

ご家族に車椅子ユーザーがいたり、介護が必要な高齢者がいたりするような場合は、上がり框をなくすか低くしたほうがよいかもしれません。とくに車椅子ユーザーがいる場合は、なるべくフラットにしておくケースが多いです。ただし高齢の方は「上がり框の段差に腰を掛けて靴を脱ぎ履きしたい」という場合もあり、一概にフラットが一番よいとはいえません。上がり框の段差をなくしたい場合は、別に腰掛け用のベンチを設置するなども検討されるとよいでしょう。

玄関スペースを広く見せたい人

上がり框を設置しないことで、玄関スペースを広く見せられるケースもあります。上がり框があると玄関が床部分と土間部分に分かれるため、玄関が狭く見えることがあるからです。上がり框の段差をなくしフラットなひと続きのスペース、ひとつの空間として認識できるとより広く感じられるでしょう。
しかし、玄関を広く見せるためには、他にもいろいろな方法があります。玄関に明るめの色を使う、靴箱は低めにする、上がり框をつけるなら斜めにして奥行きを感じさせるなどです。ただ上がり框をなくせばいいとは考えず、動線や使い勝手をシミュレーションしてみてくださいね。

お掃除ロボットをフル活用したい人

上がり框に段差があると、玄関土間まではお掃除ロボットにお任せすることができません。フラットな玄関にすることで、おうち全体の掃除機かけをお掃除ロボットに任せることができるでしょう。
ただし最近のお掃除ロボットは、1〜2cmの小さな段差なら乗り越えられる商品もでています。大きい段差があれば勝手に方向転換してくれる、落下防止機能がついたモデルも多いです。上がり框の段差をなくすと、室内に砂ぼこりが入りやすくなるので、お掃除を楽にするにはどの方法がベストなのか相談してみてください。

上がり框の設置にかかる費用と工期

上がり框の設置にかかる費用と工期は、次の通りです。

上がり框の設置費用

上がり框のリフォームは、工事の内容によって費用が大きく変わります。たとえば古くなった上がり框の交換だけなら、数万円程度から。上がり框の段差を高くしたり低くしたり、デザインを変えたい場合は、下地から組みなおすなど大掛かりなリフォームが必要になることもあります。工事の規模が大きい場合は、50万から100万円以上になる場合もあるでしょう。

上がり框の設置工期

上がり框の交換や補修程度のリフォームなら、工期は1日程度見ておけばよいでしょう。しかし段差を変えたり、デザインを大きく変えたりする場合は、もっと長くかかることもあります。

また上がり框が古くなっているということは、フローリングやタイルも補修が必要かもしれません。周りも一緒にリフォームするには1か月以上かかることもあります。求められるデザインや家の構造など条件によってさまざまですので、リフォーム会社で相談しましょう。

上がり框のリノベーション事例

ここからはスペースアップが施工した、玄関のリノベーション事例を4つご紹介します。

【事例1】広くて使いやすいL字の上がり框

狭かった玄関土間の使い方を見直し、L字型の上がり框にリフォームしました。ベビーカーも入りやすくなり、収納力もアップ。空間を有効活用でき、広くて使いやすい玄関になりました。

L字の上がり框にするには、玄関にある程度の広さが必要ですが、直線タイプよりフレキシブルに空間づくりをできるのがメリットです。玄関ホールと土間部分のバランスがとりやすく、スペースをうまく使えます。

【事例2】高級感のある大理石の上がり框

大理石の上がり框には高級感があり、モノトーンでまとめた玄関をさらに洗練された雰囲気にしています。上がり框は斜めにすることで奥行きを感じられ、キリッと空間をひきしめる存在になりました。

玄関には段差がなくフラットに。玄関ホールと土間部分は、色や素材でしっかりと境界をつくりました。靴を脱ぐ場所もわかりやすく、お客さまが来たときもスムーズに迎え入れられるでしょう。 

【事例3】コミュニケーションの場にもなる和風の上がり框

上がり框がコミュニケーションの場となる玄関です。大きかった段差を調整し、式台と呼ばれる段を設けて昇降しやすくしています。

L字の上がり框の一方に、高さのある段差を残したのもポイント。あちこちに椅子のように腰かけられるので、人が集まってのびのびと会話できるでしょう。

【事例4】ヨーロピアンなアールの上がり框

ペールトーンでさわやかにまとめた玄関に、アールを描く框がヨーロピアンな雰囲気を醸し出しています。ブルーの扉はかわいらしい空間のアクセントとなりワクワク感をプラス。そこへ向かって伸びる曲線が、奥行きを感じさせてくれます。

上がり框のベージュが、シューズ収納とホールの床面の色味にマッチ。ホールと土間をうまく調和させています。

まとめ

上がり框は普段は意識していないことも多いですが、実は玄関の印象や使い勝手を左右する、大切な存在です。バリアフリーを意識したいならフラットかやや低めに、腰をかけて談笑したいならちょっと高めにと、ライフスタイルや希望に合わせた高さにするのがポイント。また色や素材を変えることで、玄関の印象ががらっと変わりますよ。スペースアップでは、おしゃれで使い勝手のよい玄関をつくるため、上がり框など細かい部分にもこだわってリフォームプランをご提案いたします。

記事の監修者

リフォームアドバイザー

藤本塁

お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。

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