リフォームコラム

リノリウムとは?床材として使用するメリット・デメリットを紹介!

昔から床材に使用されている「リノリウム」という素材をご存知でしょうか。住宅に限らず、公共施設にも活用されているリノリウムは、環境や人体への影響が少ないことから再注目されています。環境問題や健康被害を重視している近年の暮らしに向いている建材といえるでしょう。

今回は、リノリウムの特徴や活用するメリット・デメリットをお伝えします。ほかの床材との違いやリノリウムを使用した施工事例もご紹介していきますので、取り入れる際の参考にしてください。

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人気の床材「リノリウム」とは

リノリウムとは、亜麻仁油や木粉といった植物性の天然素材を原料としてつくられた建材のこと。主に床材として使われていますが、椅子の座面やテーブルの天板など家具の仕上げ材にも使われています。

リノリウムの歴史は長く、1860年代にイギリスで製造され、約160年以上も世界中で活用されています。
日本に持ち込まれたのは1919年のこと。製造は翌年の1920年から始まりました。最初に製造したのは東リ株式会社。当時「リノリユーム」という商品名で販売されていましたが、現在は製造中止となっています。

リノリウムの人気が高まったことで、安価で使えるリノリウム「風」のクッションフロアやタイルも多く販売されるようになりました。本物のリノリウムが持つ性能とは違いますが、見た目が似ている床材をまとめて「リノリウム」と呼んでいる方もいらっしゃいます。

現在、日本で本物のリノリウムを製造しているのは、フォルボ・フロアリングB.V. 日本支店で、「マーモリウム」という商品名で製造されています。マーモリウムはホワイトハウスやバッキンガム宮殿など、名高い場所にも用いられている高品質な建材。断熱性が高く、足触りもいいところが魅力です。

リノリウムは天然素材を原料にしている

リノリウムは主に以下の6つの天然素材からつくられています。すべて自然素材で、リサイクルをして活用するケースもあります。

  • 亜麻仁油
  • 松ヤニ
  • コルク粉
  • 木粉
  • 石灰岩
  • 天然色素

これらの自然素材を混ぜて、ジュードという麻布に圧着して強度を持たせて、長期間乾燥させたのがリノリウムです。寿命は約30〜40年ほどで、丁寧に使用すれば長く愛用できるでしょう。

着色もできるため、落ち着いたグレーやブラウンから鮮やかな赤や青まで、さまざまなカラーバリエーションが製造されています。さまざまなインテリアスタイルに馴染むので、コーディネートの幅が広がりますよ。

シート状とタイル状のデザインが展開されており、ボーダー柄や市松模様に組み合わせることも可能。木目調や大理石調といったおしゃれなデザインもあります。

リノリウムが最注目されている理由

リノリウムは100年以上前に開発され、1900年代に最盛期だった床材です。その後はコストの高さや、施工の難しさから使われることが減っていき、塩ビ系の床材にとって代わられるようになっていました。

しかし最近、世界中で環境に配慮した商品が好まれるようになり、自然素材でできたリノリウムが再注目されています。製造の段階でもクリーンなエネルギーにこだわっており、処分する際には土に還すことができるからです。

また抗菌・抗ウイルスも期待できるため、ハウスダスト対策や感染対策としても注目されています。体に優しい住まいをつくりたいと思われている方や、エコロジーに貢献したいと考えている方は、選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。

リノリウムの主な活用場所

  • 一般住宅
  • 医療施設
  • 教育施設
  • 飲食スペース
  • 介護施設

人が集まる場所は安全性や衛生性に気を配りたいもの。そんな場所におすすめしたい素材です。

また、発火しづらく滑り止め効果がある特性から、安全性を確保したい場所にも適しています。たとえば火を使うキッチンは、調理中に油がはねることもありますよね。燃えにくいリノリウムなら、火事になる危険性が軽減されます。

ほかにも子供部屋やバレエスペースなど体を動かす場所は、転んたり滑ったりしてケガをする危険もあります。事故防止のために、滑りにくいリノリウムの導入を考える方もいらっしゃいます。

リノリウムのメリット

自然素材でつくられたリノリウムが持つ効果は、暮らしにどのような影響をあたえてくれるのでしょうか。自然素材がもたらす4つのメリットを紹介します。

環境を汚染しない

天然素材でできているリノリウムは、環境を汚染しないのが魅力のひとつです。原材料にはリサイクル品を多く使っていて、高耐久で長い間使うことができます。

そして処分する際には有害ガスが発生せず、堆肥化して地球に還すことが可能です。また工場でもクリーンなエネルギーが使われていて、原材料の成長から出荷までの過程でカーボンニュートラルを達成しています。

抗菌・抗ウイルスが期待できる

リノリウムの主な原料である亜麻仁油には、抗菌作用があると言われています。複数のウイルスや菌に対して効果があるということが実証されており、感染対策が重視されている今の時代にぴったりの床材です。

また、アンモニア臭の脱臭効果も実証されており、3時間で臭いがほぼ0になるという結果がでています。トイレのアンモニア臭対策にもおすすめです。

お掃除しやすい

リノリウムは掃除の頻度が減っても清潔感が保ちやすい建材です。ジュースや調味料で変色せず、こぼしてしまってもサッと拭くだけできれいになりますよ。

またリノリウムは表面がなめらかでありながら、静電気が発生しにくいのも特徴。ハウスダストを溜め込みにくいので、喘息やアレルギー体質の方、赤ちゃんがいるご家庭、裸足で過ごしたい方にもおすすめです。

耐久性・耐火性が高い

リノリウムは寿命30〜40年と非常に耐久性が高い素材。ほかの素材の寿命と比べてみると、複合フローリングは15年、クッションフロアやフロアタイルは10年、畳は20年程度で傷みが気になってくるので、リノリウムは長寿命であるということがわかります。傷などもつきにくく、家具の重さで凹みなどもつきにくいです。

またリノリウムは耐火性が高く、床材として使うと火が燃え広がりにくくなるメリットもあります。火を使用するキッチンまわりへの使用も向いていますよ。

リノリウムのデメリット

快適性が高いリノリウムですが、いくつかのデメリットも存在します。活用する場合は把握して、うまく向き合いましょう。

価格が高め

天然素材でつくられているリノリウムは、製造工程にも手間がかかっているため、ほかの床材に比べると価格が高めです。そのぶん耐久性や衛生性に優れています。またリノリウムを施工できる業者があまりいないのも欠点です。リノリウムを活用する際は、施工の可否を業者に確認しておきましょう。

少しクセのあるニオイ

リノリウムの原料である亜麻仁油が発するニオイは少しクセがあります。健康への被害はないため、安心してご使用していただけますが、人によっては苦手と思われるかもしれません。ニオイは経年と共に消えていくので、気になる間はこまめに換気を行うといいでしょう。

アルカリ性に弱い

木粉やコルクなどアルカリ性に弱い原料が含まれているため、洗剤やワックスはアルカリ性以外のものを使う必要があります。アルカリ性でお手入れをしてしまうと、傷んだり変色したりして元に戻すのが難しくなるので避けましょう。

紫外線で変色しやすい

紫外線の影響を受けやすいのもリノリウムのデメリットです。変色すると美観が損なわれてしまいます。リビングや寝室など日当たりがいい場所に活用したい場合は、紫外線対策を行うと、変色しにくくなりますよ。

クッションフロアや塩ビタイルとの違い

自然素材でできたリノリウムは、どうしても価格が高めになってしまいます。そこで似たような見た目の床材として一般住宅で普及したのが、クッションフロアや塩ビタイルです。これら2つの床材とリノリウムの違いを見ていきましょう。

リノリウムとクッションフロアの違い

クッションフロアは、塩化ビニル樹脂でつくられたクッション性のあるシート状の床材です。水に強いので、トイレや脱衣所など水まわりの床材によく使われています。

見た目はリノリウムに似ているものもありますが、リノリウムよりも安価。コストを抑えてリフォームしたい場合に向いていることから定番になりました。デザインも豊富で木目調や石調だけではなく、可愛らしい花柄など幅広く揃っています。

またペット対応のクッションフロアもラインナップされています。滑り止め効果や消臭効果が期待できるため、ペットの安全性や清潔性が保てるでしょう。ほかにも、クッション性がありながら耐久性にも優れているおかげで、爪痕が付きづらいのも嬉しいポイントです。

リノリウムと塩ビタイルの違い

店舗用から住宅用にまで用途が広がった塩ビタイル。ポリ塩化ビニルでつくられており、表面が硬くて傷に強いのが特徴です。プリント加工されたリアルな木目柄や石目柄のデザインが豊富で、安価かつ加工がしやすいことからDIYにも活用されています。

ただタイルを張り合わせていくので、目地が生じてしまうのは避けられません。製品によって目地幅は異なりますが、汚れが溜まってしまうので定期的な掃除は必要です。

硬くて傷に強いのが塩ビタイルの特徴ですが、足腰への負担が大きいデメリットもあります。素足で触れるとひんやりと感じるため、使用時にはスリッパが必要です。

床材にリノリウムを使用する際の注意点

自然に優しく人体への影響もないリノリウム。機能性を維持するためには、使用環境や洗剤に気をつけましょう。

中性の洗剤やワックスを使用する

リノリウムはアルカリ性に弱い建材。アルカリ性でメンテナンスを行うと、変色してしまって元通りにするのが難しくなります。

そのため、お手入れの際は中性の洗剤やワックスを使用するのがおすすめです。中性なら変色する恐れもないので安心して使用してくださいね。

またリノリウムに耐久性があっても、経年で表面がすり減ってくる場合があります。すり減ってくると、水分が吸収されやすくなって劣化の原因になりかねません。ワックスをかければカバーできるので、定期的にお手入れをするのが望ましいでしょう。

紫外線のあたる場所への施工は避ける

リノリウムは、紫外線の影響によって変色が起きる建材です。きれいな状態を保つポイントは、紫外線があたる場所への施工を避けること。取り入れるスペースに配慮すれば、リノリウムを長く愛用することができます。水に強い素材なので、紫外線があまりあたらないキッチンや脱衣所などの水まわりに活用するといいでしょう。

もし窓がある空間にリノリウムを取り入れたい場合は、紫外線があたりにくい部分をリノリウムにしてみるのはいかがでしょうか。フローリングやクッションフロアと調和するデザインを取り入れてもいいし、あえてアクセントにするのもいいですね。

部屋全面にリノリウムを貼りたい場合は、窓に紫外線対策を行うのも一つの手。紫外線をカットする窓ガラスを採用したり、フィルムを貼ったりする方法があります。

リノリウムを使用した施工事例

ここからはスペースアップが行ったリノリウムを活用した施工事例を紹介します。主にキッチンの床に取り入れた事例なので、ご自宅のキッチンをイメージしながらご覧ください。

【事例1】

■築年数:21年
■費用:68万円
■活用場所:キッチン

リビングダイニングとつながる対面キッチンの床に、リノリウム風の床材を取り入れた事例です。テラコッタタイルのような茶色がかったオレンジ色の床で、欧米テイストの空間に仕上げました。オレンジ色のキッチンの扉や、ブラウンの食器棚、建具ともマッチしています。リビングとキッチンで床材を切り替えることで、ゆるやかにゾーニングしているのもポイントです。

【事例2】

■築年数:36年
■費用:121万円
■活用場所:キッチン

キッチンからパントリーにかけて、リノリウム風のクッションフロアを活用した事例です。やさしいベージュの床材は、白色のキッチンとマッチ。柄がついているので汚れが気になりにくく、また水に強い素材なので水や油汚れが飛んでもサッと拭き取ることができます。リビング側のミディアムブラウンのフローリングとも相性抜群です。パントリーの入り口には扉をつけず使い勝手を重視。入り口は曲線でできたアーチ型にして、空間をやわらかく区切りました。

【事例3】

■築年数:8年
■費用:61万円
■活用場所:キッチン

ベージュ系のリノリウム風フロアタイルをキッチンスペースに施工した事例です。リビングの床がフローリングに対してキッチンはタイルと切り替えて、空間はつながっていてもしっかり区切るコーディネートになりました。天井がグレーなのも落ち着き感が出ておしゃれです。キッチン背面には木の素材を使った造作収納をつくり、家電や食材をすっきりとしまえるように。天井にはダウンライト、カウンター部分にはダクトレールとペンダントライトを設置し、照明にもこだわりました。

【事例4】

■築年数:30年
■費用:39万円
■活用場所:キッチン・パントリー

暗めのリノリウム風フロアタイルをキッチン床に採用した事例です。石のような模様がついていて、高級感のあるデザインです。フロアタイルは強度があるので、石のようなリアルな素材感がでます。掃除がしやすく、万が一調理ツールを落としたときに傷がつきにくいのも魅力です。キッチン空間は黒・白・ブラウンの3色でまとめて、上品な印象に仕上げました。壁や収納扉など面積の広い部分には白を多く使っていますが、床を暗い色にしたことでインテリアが締まって見えます。

まとめ

天然素材が原料のリノリウム。環境や人体に配慮されており、暮らしを快適なものにしてくれるでしょう。価格的に採用が難しい場合は、見た目が似ているフロアタイルやクッションフロアもおすすめです。どの素材も水に強く掃除がしやすいので、トイレやキッチンなどの水回りでも衛生的に使えます。フローリング以外の素材を探している方は、選択肢の一つに加えてみてくださいね。色や柄も豊富なので、きっとお気に入りのデザインが見つかるはずです。

記事の監修者

設計士

西村佳晃

一級建築士 / 一般耐震技術認定者 / 宅地建物取引士

建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。

建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。